『スペシャライスドのスタンプジャンパーとキャノンデールのF-SIを比べてみました』
今回はアメリカンビックブランドのスペシャライスドと、キャノンデールのマウンテンバイクをご紹介しつつ、比較していきます。特にこの2ブランドは、現在ではロードバイクのイメージが強い方も多いかもしれませんが、どちらも80年代に創世記を迎えるマウンテンバイクにおいて、アルミフレームの開発を押し進め、互いに良い刺激を与え合ったブランドともいえます。どちらもアメリカンブランドらしく、自由で奇抜で、アイデアに富んだ開発を行い、様々な革新的な自転車を生み出してきたと言っても過言ではないでしょう。サイクルパラダイスでも、マウンテンバイクの買取においてこの2ブランドは、常に高価買取となるほど重要な価値を持っています。それぞれの個性と特徴をお伝えしていく前に、マウンテンバイクについて、ご説明しつつ、2台を比較していきましょう。
マウンテンバイクに求める性能
今回ご紹介する車体は、どちらも29インチタイプ、フロントサスペンションでリジッドフレームが特徴です。マウンテンバイクは言わずもがな、山を走る為の自転車ですが、ただ単に走るだけでなく、担いだり、下ったり、悪路の種類も様々です。かつては剛性が何よりも重視された時代もありました。それまでマウンテンバイクというものがなかったので、基本はビーチクルーザーや、ロードバイクの強度設計などが基本ベースで、山でのハードな走行では壊れてしまいます。ただ登りを考えると、剛性の為に重さを犠牲にはできません。山での必要な剛性と、出来る限りの軽量性が何よりでした。そして初期のクランカーと呼ばれる、マウンテンバイクの原型からすると、ジオメトリーもかなり変わってきています。山で自転車で遊ぶという事から、次第に競技化されるにあたり、より効率的なポジションが追求され、現在に至ります。
細分化していくマウンテンバイク
かつてマウンテンバイクには、サスペンションがなく、全てのマシンはリジッドタイプでした。ロックショックスなどのサスペンション専門メーカーが生まれ、その優位性は明らかになりましたが、当時はまだ高価なものなので、サスペンションが付いた完成車は、多くはありませんでした。その頃出にプロトタイプでリヤサスが登場し、ダウンヒル競技はおのずとフルサスペンションが、当たり前になります。実は大きな機能の追加は、このフルサスペンションまでかもしれません。もちろん様々な油圧化や、ディスクブレーキの登場、カーボン素材の流用など変化はありますが、フルサスペンションほどの変化はありません。ですので現在の細分化とは、このサスペンションの有無、そしてサスペンションの機能性の多様性によって変化しています。
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様々なジャンルとその理由
現在では、山にマウンテンバイクで行った経験がない人であれば、どういうマウンテンバイクを買ったら良いか難しいでしょう。昔は単純にクロスカントリー用のマシンか、ダウンヒル用のマシンか。つまり極端に言うと、登り用か下り用かに分かれていました。ですがサスペンションの進化、フレーム構造の進化などによって、フルサスペンションであっても下り専用マシンではなくなりました。中にはコンピューターで、サスペンションを登り下りに応じて制御するのものも珍しくありません。そして分野や種類、使うシーンは各メーカーがそれぞれに提案したりで、同じジャンル名称でない事もしばしばです。そして競技自体も様々な面白いレースが生まれ、勝つ為にはそのジャンルに特化した、専用マシンを開発する事は重要となりました。こういった様々な理由によって、色々なマウンテンバイクが生まれました。
マウンテンバイクを選ぶ際のポイント
サイクルパラダイスの店頭でも、多くのお客様からどういうマウンテンバイクを選んだらいいか相談を受けます。競技指向ならそれに応じたマシンがあるので選びやすいですが、漠然と山に行って遊ぶという目的では、現在の多くのラインナップからベストな1台を選ぶのは困難です。ですのでまずはどういった下りが想定されるかを考えるだけでも良いかと思います。初心者の方であればハードでリスクの高い下りはいきなりは無理でしょう。そして今後も山道ツーリングのみで考えているのであれば、今回ご紹介するようなフロントサスのみのマシンで大丈夫です。少し下りも楽しみたいのであれば、挑んでみたいそのハードさによって、リヤサス、フロントサスのストローク(サスペンションの動く量)をある程度の目安にしてください。ダウンヒル専用マシンであれば、そのストローク量はMTB最大となり、マシン重量、下り専用のポジションなど、もはやヒルクライムは出来ないほどです。わかりやすく説明しますと、それまでの中間のマシンが多くあるというのが現在の状況の一つです。
スペシャライスドのSTUMPJUMPER COMP CARBON 29 WORLD CUP
ロックショックスのフロントサスペンション、トップモデルに近いカーボン素材、スラムの1×11速仕様のコンポーネント。29インチホイールタイプのマウンテンバイクとして、一つのスペシャライズのマイルストーンともなるマシンです。
キャノンデールのF-SI CARBON 4
キャノンデールのレフティー倒立サスペンション。フルカーボンフレーム。2×10速仕様のシマノXTコンポーネント。キャノンデールらしい迫力の、方持ちフォークが圧巻の、29インチホイールクロスカントリーマシンです。
【この2車種を比べると】
この両ブランドは、互いに個性をぶつけ合ってきました。キャノンデールは独自規格が多く、見た目にも派手なマシンが多いのが特徴です。スペシャライズドは、当初からのブランドコンセプトとして「イノベーションorダイ」つまり革新か死かとういう厳しいハードルを掲げています。どちらもその先進性は、思想や姿勢となって、現在のロードバイクの開発競争でも多く活かされているでしょう。キャノンデールは、複雑なアシンメトリックフレームが特徴です。このフレーム形状は、逆にロードバイクの開発によるフィードバックが大きく、カーボンの特性と、レフティーというアンバランスなシステムをうまく融合しています。スペシャライズドは、キャノンデールほどの奇抜な外観のデザインはありませんが、業界を牽引するほどの高い設計思想と、開発力を持っています。それはロードバイクでの輝かしい戦績が証明し、スペシャライズドも同じくロードでの研究開発の成果が、フレームに多く反映されています。目に見えての革新性という楽しさを追求するキャノンデールと、目に見えなくても機能性を追求した上で生まれる、先進的な機能を秘めたマシンを作るスペシャライズド。この両ブランドはこれからも、大きな影響力をもつブランドであることでしょう。