『スペシャライズドのシラスとキャノンデールのクイック5ならどちらがいいですか?』
色々と比較される事の多いアメリカンブランドの、価格帯もほぼ同じクロスバイクを比較してみました。この2車種はサイクルパラダイスでも多くお買取りさせて頂く車体だけに、その違いは購入検討の方のみならず、買い替えようという方も気になるところではないでしょうか。実際2016年モデルを比較すると、この2台は酷似しています。どのあたりを見て似ているのか?どう見て検討したら良いのか?まずはそこからご説明。この説明を見て頂いてからであれば、よりこの2台の比較検討がしやすくなりますよ。
「クロスバイクをどう選んだら?」
この質問、もしくはこれに近い質問をサイクルパラダイスの店頭で沢山頂いてきました。これに対してなんだか寂しい質問返しになってしまいますが、はっきりと「ご予算は?」とまず聞いてしまいます。少し自転車のカタログ等を見てみた方ならわかるかと思いますが、牛丼のように並、大盛り、特盛とシンプルではありません。大手メーカーなら一つのモデルにいくつものグレードがあり、近い形やジャンルの車種がてんこ盛りです。予算ばかりはこちらの手助け出来るところではないので、まずはここから聞いてしまいます。個人的には使い方に合った車種とグレードを選ぶのが一番幸せであると考えています。ですが自転車の場合は、実用性と趣味性が入り交じったモノだと考えています。ファッショナブルな側面もあれば、スポーツの要素もあります。そしてコレクション(所有する喜び)も大切に長く使う上では重要と考えます。ですので次の質問は「どういう使い方をしますか?」となります。目的にあった車種の選び方、比べるポイントを次にご説明していきます。
コンポーネントの違いについて
ここで言うコンポーネントとは主に変速機関連の事となります。そして現在の多くの完成車がシマノという日本の変速機メーカーを採用しています。そして使い方に合わせた種類とグレードが存在します。主にロードバイク用、マウンテンバイク用、街乗り用です。クロスバイクは使い方に合わせてこれらの種類が色々と付いています。このあたりが牛丼のように比較しにくい要因の一つかもしれません。現在のクロスバイク市場を見ると、かなりハイスペックなモデルにはロード用の105やアルテグラが付いていたりします。このあたりは先のご説明のとおり予算で割り切れていきます。予算が決れば使い方であとは決ります。フィットネスなどスポーツ目的であればロードコンポでフロント2速xリヤ8速以上です。ツーリング目的であれば主にMTBコンポでフロント3速xリヤ8速以上となります。また女性の方で、メンテナンスやメカに興味がないのなら街乗り用で内装変速というのもあります。そして今回、ご紹介の2台は速数違いのMTBコンポALTUSが付いています。
【コンポーネントについて詳しくはこちら】
フレームの違いについて
現在のクロスバイクの殆どがそうですが、この2台もフレーム素材はアルミになります。ここでも同じくですが、かなりの予算がないとカーボンのクロスバイクという選択はなくなるでしょう。多くのクロスバイクがアルミが主流である事から、この素材の違いを説明していきます。この2台はどちらも6061アルミのバテッドチューブを採用しています。様々な素材特性をもったアルミがありますが、同じアルミを使い、バテッドチューブ(必要な剛性に合わせてパイプの厚みを変えたもの)を使っています。この2つのブランドがMTB創世記からはじまり、ともにアルミ車体の開発競争をしてきた事がわかります。現在でもアルミ加工や熱処理は各社それぞれ工夫をこらしています。ですが詳しい方であれば、このクラスの車体が全て台湾生産である事はご存知なはずです。では全部同じ?そうでもありません。そのメーカーのコンセプトや研究、創造性から得られるノウハウが生産に活かされ、それがプロダクトデザイン、チュープ形状や、ジオメトリーとなって表現されていると言っていいでしょう。
【フレーム素材については詳しくはこちら(ロードバイクの素材コーナーで詳しく解説)】
パーツアッセンブルについて
自転車は様々なパーツの集合体です。フレームとメカがその自転車の性能を決めるわけではありません。むしろ回転体として乗り物である以上、ホイールとタイヤの性能は、格段の差を生み出します。また速く走る事だけが目的でなければ、サドルやグリップの質感は、快適性に大きく関わります。通勤などの毎日の使用目的であればブレーキの安全性は重要です。これらの違いを極端に振り分けると、ロードバイク寄りか、マウンテンバイク寄りになると言えばわかりやすいですね。これら全ての要素が絡んで、マシンの性能が決ります。その性能は、目的にあった性能であれば乗り手のバイシクルライフをより豊かなものにしてくれるでしょう。是非、自分がどういう使い方をするか想像してください。それによって自転車の見方は変わるでしょう。
スペシャライズドのシラス
シマノのMTBコンポーネントALTUSの3×8を装備。完成車の純タイヤは700×30にVブレーキ仕様でさらに太いタイヤもOK。ホイールのスポーク組は前後とも32本クロス組で剛重視。ステムは20度設定でアップライトなポジション設定。リアのスプロケットは8速で11〜32Tというレンジ。ストレートフォークで素材はフレームとは違いスチール素材となっています。
キャノンデールのクイック5
シラスと同じくシマノのMTBコンポーネントALTUSですが、シラスより1速多い3×9速です。完成車のタイヤはシュワルベ700×30にVブレーキ。ホイールは前後32本のクロス組で、こちらも剛性重視。ステムは12度の角度で、シラスほどのアップライトポジションではないですが、ハンドルがライザータイプなので、同じく楽なポジションになる設定。リアのスプロケットは9速で11〜32Tでレンジは同じ。フォークはストレートタイプで、フレームと同じアルミ6061を使っています。
【この2車種を比べると】
初めに述べたとおり、この2台は酷似しています。明確な違いは同じシマノ、アルタスでもリアディレイラーのRD-M370とM310の違いです。シフターも同じく違いますが、クイック5のほうが1速多くなっています。ですが11〜32というリアのギヤの範囲は同じなので、同じコンセプトである事がわかります。フォークの素材違いもありますが、それほど変わりはないでしょう。こうして見ていくとかなり似たコンセプトである事がわかります。アルミの車体作りに関してこの二つのブランドは、マウンテンバイク創世記からアルミ開発で競いあってきました。それぞれにはキャラクターの違いがありますが、この2台の性能はほぼ同じと言っていいでしょう。あえて比べるならクイック5はその名の通り、クイックな乗り味を特徴としています。またシラスはそのアップライトなポジションから、よりフィットネス指向だと言えるでしょう。クイック5がよりアクティブなスポーツタイプ、シラスがより快適性を重視したファンライド寄りのスポーツタイプ。ユーザーがこういう風にスポーツバイクを楽しんで乗って欲しいという、小さな違いではありますが、自転車に込める2大ブランドの思いの違いが見える2台でした。